債権回収、何を差し押さえたらよいか?(強制執行の対象財産について)


債権回収について

当事務所では、債権の回収に関するご相談を、個人や企業様よりお受けしています。

そのときに考えなければいけないのは、強制執行のことです。たとえば判決をもらったとしても、強制執行して回収ができなければただの紙切れに等しくなってしまいます。

債権回収をしていくには、最終的に回収するというゴールを見据えて、手続きを選んでいく必要があります。

この記事では、最終局面である強制執行について、何を差し押さえられるのか、その手続がどんなものかについて、おおまかに書いてみたいと思います。それぞれ、費用、手間、かかる時間、確実性について個人的に点数をつけてみました。

■差押の対象財産

 

強制執行をするには、目的となる財産を特定しなければなりません。

差し押さえで検討する主な財産は、以下のものです。

 

(1)銀行預金

預けてある銀行預金を差し押さえます。方法としては一番ポピュラーかもしれません。

差押命令書が裁判所から銀行に届いた時点の預金を押さえます。(その後に預金が入ってもそれは対象になりません)

相手の預金先が分からない場合は、自宅の近所の金融機関を任意に選んで差押をしてみる、ということも行われています。

【費用】  ★★★★★5   費用は比較的安価です。銀行1箇所を差し押さえるとして、裁判所に納める実費は1万円前後です。

【手間】  ★★★★☆4   銀行の預金差し押さえは、ほぼ定型の様式ですので、手間もそれほど掛かりません。ただし銀行名と支店名までは特定する必要があります。ゆうちょ銀行の場合は支店の特定までは不要です。

【時間】  ★★★★★5   問題無ければ申立から大体1週間前後で発令されますので、比較的スピーディーです。

【確実性】 ★★☆☆☆2   お金を支払わない人は銀行にもお金を預けていない人が多いので、確実な情報がないと難しいかもしれません。また、預金先の銀行に借り入れがあると相殺を理由に支払いを求められないので、回収ができません。

 

(2)不動産

不動産は、強制競売と強制管理(担保不動産の場合は担保不動産競売、担保不動産収益執行となります)がありますが、強制競売の方が多く利用されています。住宅ローンの担保権があって売却しても配当がないと競売ができなかったりしますが、担保権がなければ回収可能性はあります。ただし費用が高くつきますので、費用と効果についてよく検討する必要があります。

【費用】  ★☆☆☆☆1   最初に必要な予納金が高いです。裁判所に納める予納金は1万円前後です。請求額や裁判所によりますが、東京地裁の場合は最低60万円〜です。その他、債権額に応じた登録免許税、印紙などがかかります。

【手間】  ★★☆☆☆2   不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書等、必要書類が比較的多いです。

【時間】  ★☆☆☆☆1   申立後、鑑定人の評価を経て入札にかけますので、時間がかかります。少なくとも半年以上、買い手がつかなければさらに時間がかかります。

【確実性】 ★★★★☆4   売却後、優先順位に従って配当されますが、配当後のあまりについて回収できます。(余剰がないと裁判所が判断した場合は、競売手続きが取消の対象になります)

【参考:東京地裁民事21部・インフォメーション21】

http://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/hudousan_mousitate/index.html

(3)給料・退職金

相手の勤め先がわかっていれば、給料や退職金を差し押さえることができます。(注・年金や生活保護費は差し押さえ禁止なので、押さえられません)

給料差し押さえは、勤め先の会社に通知が行きますので、相手方の会社での立場が悪くなったり、退職してしまうこともあります。

 

【費用】  ★★★★★5   銀行預金と同じく、費用は比較的安価です。裁判所に納める実費は1万円前後です。

【手間】  ★★★★☆4   勤め先の特定が必要ですが、申立書につける書類は比較的少ないです。
【時間】  ★★★★★5   問題無ければ申立から大体1週間前後で発令されますので、比較的スピーディーです。

【確実性】 ★★★☆☆3   差し押さえができるのは、給料全額ではなく、給料(基本給と諸手当、ただし通勤手当を除く)から所得税、住民税、社会 保険料を控除した残額の4分の1です。全部押さえられてしまうと、相手が生活できなくなってしまうからですね。ただし、税金等を引いいた額が月額44万円を超えるときは、その残額から33万円を引いた額について全部押さえられます。

(4)売掛金

相手が自営業者や会社の場合、その相手の売掛金(他の会社などから近いうちに入ってくるお金)を押さえることができます。相手の会社の取引先がわかっていれば、検討するとよいと思います。

【費用】  ★★★★★5   銀行預金と同じく、費用は比較的安価です。売掛先1箇所として、裁判所に納める実費は1万円前後です。

【手間】  ★★★☆☆3   申立書につける書類は比較的少ないですが、どんな売掛金なのかという書き方に一苦労します。
【時間】  ★★★★★5   問題無ければ申立から大体1週間前後で発令されますので、比較的スピーディーです。

【確実性】 ★★☆☆☆2   売掛金が支払われるタイミング、売掛金の内容をどこまで把握できるかが勝負です。

 

(5)敷金・保証金

相手の住んでいる住所の敷金や、相手が会社なら事務所・店舗の保証金が差し押さえられます。しかし、現実的な回収を考えると難しい場合が多いと思われます。

【費用】  ★★★★★5   銀行預金と同じく、費用は比較的安価です。裁判所に納める実費は1万円前後です。

【手間】  ★★★★☆4   相手の住所の不動産の名義を調査して、大家が誰か特定する必要があります。
【時間】  ★★★★★5   問題無ければ申立から大体1週間前後で発令されますので、比較的スピーディーです。

【確実性】 ★☆☆☆☆1   敷金・保証金は、大家側は借主が退去するまで支払わなくていいので、借主が出て行くまで回収はできません。また、出て行く時点で多額の未払い家賃が発生したり、原状回復費用があったりすると先に敷金に充当されますので、回収できません。

 

(6)生命保険

相手の契約している生命保険を差し押さえることができます。差し押さえができるのは、保険契約を解約した時に戻ってくるお金ですが、差し押さえをすれば差し押さえた側が保険契約を解約して、回収することができます。

【費用】  ★★★★★5   銀行預金と同じく、費用は比較的安価です。保険会社1箇所で、裁判所に納める実費は1万円前後です。

【手間】  ★★☆☆☆2   普通はどこと保険契約をしているかは第三者は分からないので、調査が必要です。弁護士に依頼すると、弁護士会の照会制度を利用して保険会社に照会してもらえます。ただし、回答を拒否する保険会社もあるようです。

【時間】  ★★★★☆4   問題無ければ申立から大体1週間前後で発令されますので、比較的スピーディーです。

【確実性】 ★★☆☆☆2   うまく生きている生命保険が見つかればいいですが、お金のない人は生命保険料も支払えず、解約している可能性があります。また、相手が保険会社から借り入れをしているとその分は相殺されます。

 

(7)自動車

相手が自動車を所有していれば、これを競売に掛けて代金を回収することができます。相手が高級車を所有していれば回収できるかもしれません。

【費用】  ★★☆☆☆2   不動産競売よりは安く、東京地裁では予納金は10万円です。また、執行官の費用もかかってきます。

【手間】  ★★★★☆4   自動車の登録事項証明書など、必要な書類は若干多いです。また、自動車競売開始の決定を受けたと、執行官に自動車引渡執行の申立てをする必要があります。この執行で自動車を取り上げられるかどうかが問題となります。

【時間】  ★★☆☆☆2   申立てから競売開始決定、引渡執行、評価、売却手続きと手順を踏みますので、少なくとも数ヶ月から半年以上はかかります。

【確実性】 ★☆☆☆☆1   自動車ローンを利用していて、自動車の所有者がローン会社になっている場合(所有権留保)、競売ができません。また、当然ながら中古車ですから売却価格が安いため費用対効果は要注意です。そのため、あまり検討の対象にはならないことが多いです。高級車であればやる価値はあるでしょう。相場を調べる必要があります。

【参考:東京地裁民事21部・インフォメーション21】

http://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/mousitate_zidousya/index.html

 

一般的に考えられるのは以上です。他には、株券、船舶、電話加入権、ゴルフ会員権、貸金債権なども差し押さえの対象になります。

それぞれ必要な書類や、申立書の様式が異なりますので、もし分からないことがございましたらご相談ください。

とりかご

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