司法書士の仕事【裁判編】4

  • 2012年02月17日
  • 裁判事務
  • 著者:司法書士 山内隆之

■仮差押なども司法書士の仕事

司法書士は簡易裁判所で訴訟の代理ができますが、「仮差押」などの民事保全事件も簡易裁判所の管轄であれば代理することができます。簡易裁判所にも保全係があります。

簡易裁判所の管轄でない場合でも、司法書士は書類作成という形で本人訴訟支援ができます。

司法書士の仮差押の仕事について、どのように行うか触れてみたいと思います。

 

■仮差押とは?

仮差押は何かというと、いったん他人の財産を「仮に」差し押さえるという制度です。

例えばこんなケースで考えてみましょう。

AさんはBさんにお金を貸しています。Bさんに何度返してくれるよう催促をしても払ってくれないので、Aさんは裁判を起こそうと考えました。Aさんは、訴状を準備しましたが、こんな噂を聞きました。どうやらBさんは他にもいろいろ借金を抱えていて、今自宅を売却して借金を返済しようと考えているらしいと…。そして、その売却の日が1ヶ月後に予定されているらしいと。Aさんは、Bさんが自宅を売るなんていう話は聞いていませんし、その売却代金からBさんが支払ってくれるなんていうことも聞いていません。

こういうときは、仮差押の出番です。

 

■裁判には時間がかかる

ところで、裁判は、証拠を集めて訴状を作り、裁判所に提出しなければいけません。裁判所で訴状を受付してから、裁判所では1回目の裁判の日を決めて、裁判所から相手にいついつ裁判所に来てくださいという呼び出し状を郵送します。

この裁判の最初の日は、大体1ヶ月から1ヶ月半後くらいに定められるのが通例です。結構時間がかかりますね。

そして、1回目の裁判で結審して即日判決が出れば良いのですが、そのように迅速に結果が出るのはあまりなくて、その後2回、3回と裁判が続きます。訴状を裁判所に出してから早くて3ヶ月くらい、長いと半年、1年、それ以上かかってしまいます。

このように裁判には時間がかかります。そのため、Aさんがせっかく訴状を裁判所に出しても、判決が貰えるのは早くても3ヶ月後になると思われますし、Bさんは1ヶ月後には不動産を売ってしまい、すっからかんになってしまう可能性が高いのです。そうなってしまったらAさんが貸したお金を回収できる可能性はぐっと下がってしまいますね…

 

■そんな時には不動産仮差押

そんな時に役に立つのが、仮差押の制度です。

仮差押は、裁判所に申立をして、基本的に相手の意見を聞かず、一方的に仮差し押さえをしてしまうというある意味強力な制度です。

そのかわり、裁判所には申立に至った事情を証拠資料を添付して説明しなければなりません。それで裁判官が納得して、保証金をおさめれば、仮差押命令が発令されます。保証金なしというケースもあるようですが、ほとんどの場合、保証金を納めるように言われます。この保証金は、万が一仮差押の申立が虚偽のものであったりしたなどの理由で、相手が損害を受けたときのための担保です。

 

■申立の準備

さて、今回はBさんが不動産を売ろうとしていますので、売られてしまう前にそれを押さえたいと考えます。ですので、「不動産仮差押命令の申立」をします。

何せ、売るのは1ヶ月後という噂です。時間がないですね!!
できる限り急いで申立書や証拠書類をそろえて申立をしなければなりません。
対象の不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、貸したお金の借用書、陳述書などなど、今回の請求を裏付ける資料や申立に必要な書類をそろえます。徹夜で作業することもよくあります。1日、2日で全て書類をそろえて申立をしたとしても、早くて発令は1〜2週間後かも知れません。何があるか分かりませんので早めに準備すべきです。

この不動産の仮差押、AさんがBに貸したお金が140万円以下なら、不動産が1億円の価値があったとしても、司法書士は代理できます。

 

■申立→面接

仮差押などの民事保全手続きは、急ぐ手続きですので、裁判所も迅速に対応してくれます。申立をして、時間帯が早ければその日に面接ができる場合も多いです。司法書士が代理人になれる事件であれば司法書士が面接を受けます。140万円以上で本人が地裁に行く場合は、司法書士も同行しますが、裁判官との面接は本人が行います。

申立に問題がなければ、裁判官に担保金をいくら積んでください、と言われます。そこで担保金を供託所に預けて、その証明書を裁判所に出して発令、ということになります。

 

■保証金はいくら?

保証金がいくらかというのは、裁判官の裁量になるため、申立をしてみないと分かりません。差し押さえの対象や、請求額などが基準になるようです。貸金でしたら貸したお金の2〜3割が基準とも言われます。

 

■仮差押の登記

仮差押の申立が認められますと、裁判所から法務局(登記所)へ仮差押の登記の嘱託がされます。そこで不動産の登記簿に仮差押の登記が入るわけです。

この仮差押の登記が済みますと、不動産の登記簿ではこんな感じで表示されます(サンプルです)。

仮差押の登記事項の例です■仮差押の登記が入ったら…

通常、不動産を買うときには仮差押がついたままで買う人はいません。仮差押の登記が消えないと、いつか競売になって不動産を失うおそれがあるからです。
Bさんが不動産を売ろうと動いてる最中にこういうことが起きてしまいますと、買主はこのままでは買えないですねぇという話になりますので、Bさんは何かしらの対策を考えなければなりません。

例えば…
(1)売るのを諦める
(2)売買代金から返済するのと引き替えに仮差押を消してもらう。
(3)事前に親族などからお金をかき集めて 返済して仮差押を解いてもらう。
(4)裁判所に保証金を積んで、仮差押を解放してもらう。
(5)お金を借りた覚えはないので、裁判で争う。etc…

というわけで、どうしても売らなければならないような事情があるならば、仮差押した債権者に対して返済をする方向に動く可能性が高いと思います。

そうすると、本裁判を行うまでもなく回収にこぎ着けるわけですね。こういう点は仮差押のメリットと言ってよいかと思います。

 

■とにかく急いで行う手続き

仮差押は密行性、迅速性が要求される手続きですので、場合に寄っては本裁判を起こすよりも早い解決が期待できます。

ただし、一歩間違うと損害賠償の対象にもなりかねないので、急ぎつつも慎重に進める必要があります。

以前勤めていた弁護士事務所では、緊急の保全命令の申立の依頼があり、私もよく仮差押や仮処分の申立書を徹夜で作ったりしていました(^^

急ぎの申立などがあればできる限り対応しますので、ご相談ください。

“司法書士の仕事【裁判編】4” への2件のフィードバック

  1. pahoehoe より:

    司法書士の仕事、興味深く読ませてもらいました。
    具体例を挙げたわかりやすい表現で、ずぶの素人にもすんなり理解できました。

  2. takayuki yamauchi より:

    ありがとうございます。
    なるべく専門用語を使わず、分かりやすく解説しようと心がけていますが、誤字脱字や分かりにくいところがありましたらご指摘いただけるとありがたいです(^^)

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